ジョルジュ・ビゴー(1860-1927)はパリの生まれ。ジャポニスム全盛のパリでフェリックス・ビュオやフィリップ・ビュルティらと交流するなかで日本美術への憧れをつのらせ、明治15年(1882)に来日。以来、同31年(1898)に帰国するまでフランスやイギリスの通信員として数々の新聞・画報に日本に取材した挿絵や風刺画を寄稿、また『クロッキ・ジャポネ』に代表される個人版画集を刊行し、日本の近代版画史に重要な足跡を残した。帰国の直前まで(明治25~30年頃にかけてか)千葉県稲毛の海気館のそばに暮らしたことが知られている。

この作品は、ビゴーが帰国後に手がけた油彩画。眺望の広がりを強調する横長の画面に、ざっくりとしたタッチにより稲毛の浜で憩い、あるいは漁る人々が生き生きと描かれる。左手奥に小さく見えるのは、当時海中にあった稲毛浅間神社の一の鳥居。今は周囲が埋め立てられ、景観は大きく変わっている。かつての遠浅な海岸線と保養地としての賑わいを伝える、貴重な一点である。