1948年東京都生まれ。写真家、美術作家。1970年渡米、1974年よりニューヨークと日本を行き来しながら制作を行う。写真作品においては、明確なコンセプトのもと大判カメラを用いて撮影している。代表作に「ジオラマ」「劇場」「海景」シリーズ。近年は、執筆や建築プロジェクトも数多く手がける。2010年紫綬褒章受章。2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ叙勲。2017年、10年にわたる構想を経て文化施設「小田原文化財団 江之浦測候所」を開設。
《South Pacific Ocean, Maraenui》は、1980年から制作している「海景」シリーズのひとつ。杉本は、幼少期の記憶につながることから海景に興味を持ち、世界各地の海をモノクロで撮影している。シリーズの作品はすべて、水平線が画面を上下に等分する構図となっており、空と海以外はなにも写っていない。徹底されたシンプルな画面にもかかわらず、本作は見る者に強く思考を促す。海景は、杉本の意識の原点でありながら、人類の意識の原点をも呼びおこすのだ。