鈴木其一は、江戸琳派の酒井抱一(1761-1828)の家臣として抱一を補佐しつつ、早くから優れた画才を発揮した高弟である。師風を受け継ぎながら、幕末期の江戸という時代を反映して、鋭敏で斬新な造形感覚をより強く発揮した作品を遺した。其一一門は多く、抱一派の主翼を担い、明治以降までその水脈をつないで広く関東に広めた功績もある。

一面の芒の野に靄がたゆたう幻想的な画面。銀箔地におそらく銀泥と墨を使い分けて、文様のように洗練化した芒の穂先の型を繰り返し全面に描いている。穂先の線はどこにもよどみがなく、完璧にしなやかで美しい。其一による同じ図柄の作例が、鮮やかな白椿図の金屏風に対する裏絵として実在する(フリア美術館蔵、現在は二曲二隻に改装されている)が、変色が少なく保存状態も格段によい本図は、洗練の度を進めたその翻案策であろう。若干横長の本紙となり、霧を左右に反転し、より横に長くたなびかせる構図へと変えている。冴え冴えとした銀の輝きが今も保たれ、繰り返される線に含まれたわずかな抑揚まで感じ取ることが出来る。「為三堂」(朱文瓢印)と「其壱」(朱文二重円印)がある。