虎を足で抱えて押さえつけ、口元に手を入れて組みひしぐという、二代目市川団十郎の豪快な荒事の演技の姿で、初期鳥居派の「瓢箪足蚯蚓描(ひょうたんあしみみずがき)」の描法と、墨摺に丹を用いた筆彩色により、素朴ながらも力強い魅力を放っている。

清倍がこのような丹絵を手がけたのは正徳期(1711~16)を中心としていることから、正徳3年(1713)正月山村座「石山源太鬼門破(いしやまげんたきもんやぶり)」における二代目市川団十郎の石山源太荒王役で行われた演出であろうと考証されている。

グスタフ・クリムト(1862-1918)が、その邸宅の内装を手がけたことで知られるベルギーの銀行家アドルフ・ストックレー(1871~1949)の浮世絵コレクションのうちの一点である。