「通俗水滸伝豪傑百八人一個(つうぞくすいこでんごうけつひゃくはちにんのひとり)」のシリーズのヒットをきっかけに、「武者絵の国芳」として知られた国芳の代表作の一つである。
山東京伝による読本『善知安方(うとうやすかた)忠義伝』に取材した作品で、源頼信(みなもとのよりのぶ)の家臣大宅太郎光国(おおやたろうみつくに)と、平将門(たいらのまさかど)の遺児で、妖術を操る滝夜叉姫(たきやしゃひめ)との対決の場面である。生々しい骸骨が御簾を破って大きく半身を乗り出しているが、読本の中では数百の骸骨(がいこつ)が戦闘を繰り広げる場面であるのを、あえて大きな骸骨の出現に代表させて意表をついている。浮世絵版画の3枚続は、1枚ずつでも構図が独立するように作画するのが通常であるが、その慣例に従わない大胆な構成にも国芳らしい創意が感じられる。