江戸時代末期の文久3年、贅沢な摺の技法を用いた役者大首絵60図が出版されました。これは、神田塗師町の鉄物問屋、紀伊国屋こと三谷家の八代目の長三郎がスポンサーとなって出版されたシリーズです。それだけに絵の具の質も高く、色鮮やかで、摺にも高度な技法が使われています。
この図は、5代目市川海老蔵が隈取りをした顔で正面を向く、迫力のある作品です。碓井荒太郎貞光、すなわち市川宗家のお家芸として歌舞伎十八番に数えられる、暫を演じる時の顔です。鬘に、正面摺と呼ばれる、艶を出す技法で表された髪の毛の表現も見事です。

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