新潟の豪農に伝えられた歌麿の肉筆画で、江戸時代、この家の七代目の主人が江戸へ旅した際に、歌麿に直接頼んで描かせたという伝来を持つことでも貴重である。共に知られている歌麿の《立姿美人図》(個人蔵、東京国立博物館寄託)も、同家に伝えられた作品として知られている。

唐風の水盆をそばに置いて、団扇(うちわ)を持って涼むくつろいだ姿の美人が描かれている。丁寧な筆致と彩色が際立つ作品で、薄い着物から、白い肌や赤い襦袢(じゅばん)の透けて見える描写も繊細である。寛政中期といえば、版画においても充実した作画活動が行われていた時期であり、最盛期の歌麿らしい稀少な肉筆の名品である。