河井寛次郎と植木茂 ― ふたりの木彫
2001年6月12日[土] – 7月29日[日]
会期
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2001年6月12日[土] – 7月29日[日] ※この展覧会は終了しました |
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休室日
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毎週月曜日(休祝日の場合は翌平日) |
観覧料
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一般800円(640円) 大学生・高校生560円(450円) 中・小学生240円(200円) ※( )内は前売、団体30名以上の料金 |
主催
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千葉市美術館
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彫刻の素材 ― 木
わが国の彫刻には、古くから木が用いられています。それは、作り手のイメージを表現するためだけの、身近で便利な素材として扱われてきたわけではありません。日本では作り手たちが素材である木との対話を重ねることで独特の造形を導き出しています。彼らが行った対話の記憶は、さまざまなかたちで次の時代に受け継がれることを繰り返し、彫刻のあゆみを形成しています。
河井寛次郎の木彫
陶芸家・河井寛次郎(1890-1966)は島根県安来市に生まれ、東京高等工業学校(現・東京工業大学)卒業後、京都市立陶磁器試験場に入所。1920年に京都・五条坂に「鐘渓窯」を築き終生の活動の場としました。
初期は中国の古い陶磁器の研究を踏まえ、高度な技術を駆使した作品によって高い評価を得ていましたが、柳宋悦や学友だった濱田庄司との交流から民藝運動と出会い、独自の表現世界を展開することになりました。なかでも木彫は1951年から本格的に取り組み、晩年の制作活動において陶と並ぶ重要な位置を占めています。
植木茂の木彫
本業のみならず、サントリー・ロイヤルの瓶のデザイナーとしても広く知られている彫刻家・植木茂(1913-84)は北海道札幌市に生まれました。
はじめ洋画を志していた彼は同郷の三岸好太郎に師事。当初は三岸が所属する独立美術協会に参加しますが、1935年に訪れた唐招提寺で大日如来が結ぶ印に魅せられて彫刻の道に進むことを決意します。そして1937年には当時わが国での作例が少なかった抽象彫刻を発表。彫刻については全くの独学でしたが、主に木を素材としながら一貫して抽象的フォルムの探求を行い、日本の彫刻のあゆみに新しいページを加えました。
ふたりの木彫
河井寛次郎と植木茂。共に同時代のアーティストでありながら、出発の動機や活動領域が全く異なるふたりの木彫は、しかしその形態や造形思考において共通するものを見ることができます。とくに、木という素材との対話によって導き出された彼らの作品は、ふたりが敬慕していた江戸期の円空仏や木喰仏を媒介として、同じ場所や空間での比較・検討を可能にさせています。その意味で、本展はたんに現代における木彫の一傾向を紹介することに止まらず、現代の造形に息づく伝統的なるもののありかを問うこころみでもあります。
本展では河井寛次郎と植木茂の木彫約75点に加え、彼らが制作した椅子を中心とした家具類約10点、彼らが所蔵していた円空仏と木喰仏やその関連資料などによって、ふたりのアーティストの世界を紹介するものです。