企画展

日本の版画 1921-1930 都市と女と光と影と

2001年9月18日[火] – 10月21日[日]

会期

2001年9月18日[火] – 10月21日[日]

※この展覧会は終了しました

休室日

毎週月曜日(休祝日の場合は翌平日)

観覧料

一般800円(640円) 大学生・高校生560円(450円)  中・小学生240円(200円)

※( )内は団体30名以上、または前売の料金

主催
千葉市美術館

この展覧会は、1921年(大正10年)から1930年(昭和5年)までの10年間に、日本の版画がどのような作品を生み、私たちに何を語りかけてくれるのかを探ろうとするものです。1910年代、私的な表現を尊ぶ芸術思潮のなか、版画はそれにふさわしい手段として見いだされ、新鮮で個性的な造形の数々を 世に送りました。1920年代には、前代の実りを受けつぎながら、造形上の、そして技法上のさらなる模索がなされたのです。

「自画自刻自摺」を謳った創作版画の領域では、恩地孝四郎や平塚運一、川上澄生、川西英といった作家たちがそれぞれに独創的な「版のかたち」を深化させました。彼らは展覧会やあまたの版画誌を舞台 に奔放な刀をふるって版画熱をあおり、日本各地の若者を版へと導きました。浮世絵の流れをくむ世界で、1923年9月の関東大震災をきっかけに、当代の風物を写し、広くゆきわたらせるという錦絵本来の機能が改めて見直されました。「現代の浮世絵」を志す、いわゆる新版画の版元が渡邊庄三郎以外にもいくつか生まれ、伝統とモダンとがせめぎあう貴重な作例を残しました。また新興美術運動における版も、注目すべき重要な一群を形成しています。とりわけ岡田龍夫や村山知義ら、マヴォの作家たちが愛したリノカットという技法は、彼らの過激なヴィジョンによくこたえ、20年代の版画界に忘れがたい強烈な光芒を放っています。

1920年代の版画が語るのは、こうした造形や技法の冒険だけではありません。くり返しになりますが、関東大震災という未曾有のできごとは旧い東京を一掃し、社会を激変させ、現代の生活の原形を作りました。鉄とコンクリートの構成物へと変わりゆく街、因習から解き放たれて街を闊歩する女たちの姿に、版画家たちは驚きと好奇心に満ちた視線を投げたのです。彼らが刻んだダイナミックで享楽的、同時に影をも宿した都市の姿は、私たちには懐かしく、そして少々ほろ苦く映るかもしれません。洗練された版表現のなかに、当時 の社会を色濃く写す作品群―ポスター、装幀、デザインなどもふくむ約300点から、版画というメディアの魅力を感じていただけたら幸いです。なお本展は、1997年以来千葉市美術館で開催しております「日本の版画・1900-1910・版のかたち百相」「日本の版画・1911-1920・刻まれた「個」の饗宴」に続く第3弾であり、出展作品の約4分の1を千葉市美術館所蔵品により構成いたします。

Search