企画展
所蔵作品展

渡邊版—新版画の精華

2013年11月26日[火] – 2014年1月19日[日]

フリッツ・カペラリ《猫を抱く少女》大正4(1925) 年 千葉市美術館蔵
会期

2013年11月26日[火] – 2014年1月19日[日]

※この展覧会は終了しました

休室日

12月2日[月]、12月16日[月]、12月29日[月]– 1月3日[金]、1月6日[月]

観覧料

一般200円(160円) 大学生150円(120円)

※( )内は団体30名様以上

※ 千葉県在住の65歳以上の方、小・中学生、高校生、および障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料

※ 同時開催「川瀬巴水展」入場者は無料

主催
千葉市美術館

「生誕130年 川瀬巴水展—郷愁の日本風景」の開催にちなみ、巴水の版画家としての生涯を決定した人であり、その木版画のほとんどをプロデュースした版元・渡邊庄三郎の仕事を回顧します。当館の所蔵品のなかから、特に新しく実験的といわれる関東大震災前の渡邊版を中心に、72点の作品から構成いたします。

 渡邊庄三郎(明治18年~昭和37年/1885-1962)は茨城県猿島郡五霞村(現在の五霞町)の生まれ。明治28年(1895)に上京、35年に古物商小林文七の店に雇われ、古錦絵輸出部に配属されて人生が開けました。浮世絵版画を日々扱い、また店に持ち込まれた歌川広重の版木が再摺されるのをまのあたりにしてその美に開眼したのです。当時国内で錦絵を顧みるものは少なく、良品は国外へ流出するばかり。新作がでることはあっても、多くは版の絵の魅力を失った、精巧さばかりが目立つ肉筆画の複製のような作品でした。渡邊は今ひとたびの錦絵興隆を願います。
 明治39年に独立し、翌年高橋松亭という絵師と組んで外国人向けの新作を試み、好調な売れゆきに手応えをつかみます。42年には京橋に渡邊版画店をオープン、新作とともに丁寧な復刻事業を展開して彫りと摺りの技術を学び直しました。そして大正4年(1915)、オーストリア人フリッツ・カペラリを迎え、白地にくっきりと映える墨線や和紙の質感を殺さない澄んだ摺色といった木版画の美質に、画家の個性的でモダンな筆致を融合させた斬新な一群を完成させました。こうした試みの延長線上に伊東深水の清新な諸作があり、深水の《近江八景》に感激して木版に道を定めた巴水との共作もあったのです。ほかにも役者絵の山村耕花や名取春仙、風景画の吉田博らと組み、戦後にかけてあまたの新作を世に送りました。渡邊が創始し、のちに他の版元も追随した錦絵再興の動きは現在「新版画」と総称され、国内外で高い評価を受けています。

 渡邊の店は今も存続し、三代目にあたる渡邊章一郎氏がその意思を継いでいます。「生誕130年 川瀬巴水展—郷愁の日本風景」は章一郎氏の全面的なご協力を得て実現しました。この所蔵作品展は巴水展の前史を語るものともいえます。巴水展とあわせてご覧いただくことで、錦絵再興にかけた版元・渡邊庄三郎の創作の軌跡をたどり、また巴水とは異なるそれぞれの絵師の個性や、絵師・彫師・摺師の共同作業による伝統木版独特の魅力的な風合いをお楽しみください。

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