千葉市美術館30周年

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美術館ボランティアによる「おしゃべりアート探検」を開催しました

2025.9.8 美術館ボランティアスタッフ

2025年度に開催したボランティア企画を報告いたします。
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8月22日(金)〜24日(日)に、千葉市美術館ボランティアによる企画「おしゃべりアート探検〜みんなでみよう現代アート〜」を開催しました。
開催中の企画展を、美術館ボランティアスタッフと一緒におしゃべりしながら鑑賞していくというこの企画。少しづつ形は変わってきたものの、実は歴史が長いこのプログラムは毎年大変好評で、今回も3日間で32組61名の方にご参加いただくことができました。プログラム中の様子を写真を中心にご紹介いたします。

友人と、家族で、あるいはお一人で。年齢を問わずどなたでもご参加いただけるこのプログラム。ボランティアスタッフはガイド役ではありますが、参加者自身のペースや興味に合わせて展示室を周り、対話を交えながら一緒に作品を鑑賞していきます。




当日、ガイドをされたボランティアさんから寄せられた、参加者の様子にまつわるエピソードもいくつかご紹介します。

・偶然居合わせた一年生の男の子とお母さんの親子二人組と一緒に鑑賞しました。最初から興味津々で、西村陽平の《穏やかな癒し》のところから男の子たちが離れないのです。「球体の中から話声がするようだ。返事をしていい?」と言い、作品から何か聞こえたのかいきなり球体に向かって話始めました。また、三木富雄の《EAR》の所でも、じ~と座り込んで耳の穴を5分程度見ていましたが、耳に向かって何か話し込んでいました。「向こうに届いたかな」と呟いていたので、自分たちで会話を楽しんでいる様子でした。草間彌生の作品の所でも二人で何か子供らしい会話をしていたようです。

・現代アートがお好きな壮年男性とご一緒しました。中西夏之の絵画について、彼が約2メートルの長い柄の筆を使い描くようになった背景をご紹介したところ、「そういえば(絵として)大きな世界の一部を切り取るなら、短い筆でキャンバスに肉薄して描くより長い筆で俯瞰で描いたほうがいいですもんね」という言葉をもらいました。長い筆を使う、という部分は文字面どおりにしか頭に入れていなかったのですが、一気に中西の絵画への姿勢がイメージできました。その他、全体的に一緒に鑑賞することで、アート探検をナビゲートするボランティア自身も色々導かれて発見できることがあり、よい経験となりました。

・午前午後とも、就学前のお子さん(4歳、5歳)を含むご家族を担当させていただきました。勅使河原蒼風《無》では、あまりの迫力と字の大きさにびっくりしたようです。「きっとすっごく大きな筆で、墨もいっぱい付けて書いたんだね」と言うと、「だからいっぱいはねたんだね!」と納得していました。杉本博司の《海景》の部屋では、入ってすぐに全員がちょっと戸惑っているようでした。「6点とも全部違う海です」と伝えると驚いていました。「どの海が好きか、教えてください」と言うと、それぞれの作品を一生懸命に見比べていました。そして、未就学のお子さんも自分の好きな海をちゃんと選んでくれました。4歳さんも5歳さんも「作品を見て楽しい!面白い!」という気持ちを身体全体で表現していました。本当に目から鱗が落ちる様な貴重な、そして楽しい経験をさせていただきました。

・外の暑さを忘れるほど、静かで穏やかな時間をお客様と共に過ごすことができました。初対面のお客様にどのようなお声がけをしながら鑑賞したら良いか不安でしたが、「アートが好き」という共通項のもと気になる作品があれば足をとめ、作品に近寄ったり離れたり、キャプションをじっくりと読んで行くうちに、言葉のキャッチボールを介しての鑑賞の大切さを改めてお客様より教えていただきました。

 

ちょっとした問いかけや関わりがきっかけで、作品への眼差しがグッと深まったり広がったりする。それが作品鑑賞の面白いところです。
参加者の方々には、ボランティアスタッフと一緒に作品を楽しむことで、いつもとは一味違う展示室での時間を体験いただけたのではないでしょうか。
千葉市美術館では、こういったユニークで楽しい企画をボランティアさんご自身が企画し開催されています。今後も様々なイベントが展開していく予定ですので、ぜひ定期的に情報をチェックしていただき、美術館まで足をお運びいただければと思います。

(報告者:教育普及担当 田口由佳)

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