2025年度に開催した、ワークショップパートナーによる企画を報告いたします。(講師・高橋恵子)
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育児や介護、相談援助など、日々“誰かをケアする”役割を担う人が、少しだけ自分をいたわる時間を持つためのアートワークショップ。
「画材で遊ぶ、わたしをほぐす 〜ケアする人のためのアート時間」を2025年12月6日(土)に開催しました。
本プログラムは、これまで「画用紙は、わたしだけの遊び場」(2022)、「ライブに描く、色とあそぶ」(2023)、「認知症きほんのき」(2024)と継続してきた取り組みの延長にあり、学芸員の田口由佳さん・上田美里さんと共に、“ケアする人”である私自身の経験も重ねながら制作してきました。
照明は?画材の導線は?声かけの間隔は?もし動揺する人がいらっしゃったら?安心のために慎重な準備期間を要しました。
今回の時間をひとことで表すなら 「うれしい誤算」。セルフケアというテーマから癒しの雰囲気を予想していましたが、ふたを開けてみると、それぞれの自己表現が思いきり花開き、静かでありながらとてもパワフルな場となりました。遊ぶことが本来のリズムを取り戻し、生きる力につながる——その実感をスタッフ一同深く味わいました。
ワークショップでは、
1)画材の特性を知り、肌に合うもので遊ぶように表現する
2)自己表現の受けとめ方を共有し、繰り返す
3)アートを介してゆるやかにつながる
という3つを軸に進行。クレヨンで心身をほぐす発散ワーク、水彩の“ゆらぎ”に身を委ねる時間、そして多様な画材に触れて自由に制作するメインワークへと展開しました。
特に印象的だったのは、参加者の皆さんが自然に“自分だけの表現”を見つけていった姿。
完成品としての「作品」ではなく、その人からにじみ出る「表現」が会場を満たし、互いの表現を行き来する中で、思いを素直に語り合うシェアも深まりました。
【参加者からの声/アンケートより抜粋】
・グループで話す時間があり、他の方の作品の意図などを聞くことができ、発見がいっぱいありました。他の方の作品を見て回る時間もあって、一人一人全く違う作品ができていることに驚きがありました。普段なかなかする機会がない画材で遊ぶと言うことができて、子供の頃の楽しかった気持ちを久しぶりに味わいました。
・とても安心して過ごすことができたのがよかったです。最初はどうしたらいいかと頭で考えてしまったけれど、やっていくうちに自然と手が伸びていく自分に驚きました。またぜひやってみたいと思いました。
・今日集まった皆さんがさすがケアする人のせいか、作品にも全体の雰囲気も癒しの空気が充満しており、本当に包まれ感がよかったです。行きたいけどどうしようかと直前まで迷っていたので参加してよかったです。認知症の方達とアートを楽しむ方法を考えていてどうせなら一緒に支援職も癒されるものがいいと、こちらの活動に注目していました。今回はタイトル通り自分がまいっていたので、自分のために参加しましたが、本当に光が刺すような体験でした。
・最近ブレ気味だったのがちょうど良い位置に戻りました。地に足がつくようになりました。自分でも今日したことを続けてまずは年末年始を落ち着いて過ごします。
・画材で遊びながら自分の緊張がほぐれていくのがわかりました。何をしても表現、良いと言うのが安心でした。そもそも絵は苦手意識があったので、苦手を感じることなく楽しく参加できました。
・今回は描くのがメインかと思っていたが、やはり自分は紙を使ったコラージュが好きなのだなと再認識した次第です。参加された方の作品に非常に感動しました。普段自由に過ごすということがないので、今回のように自由画材で遊ぶと言う時間がとても楽しかったです。ありがとうございました。セルフケアの大切さが身に染みました。またこのような企画があれば参加したいです。
・優しく安心安全な雰囲気の中、のびのびと絵を描くことができました。声かけが優しく的確でたくさんの気づきを得ることができました。ありがとうございました。自分でも気づいていなかった自分の弱さ強さを発見できた3時間でした。自分の闇の部分を知ることで、光を感じることができたような気がします。
参加者さんのお声と笑顔に、スタッフ一同まだ胸を熱くしたままです。
※次回の『画材で遊ぶ、わたしをほぐす〜ケアする人のためのアート時間』は、
2026年3月20日(春分の日)開催です。募集ページはこちらから。
こちらのワークショップは、福祉をたずねるクリエイティブマガジン「こここ」さんにも取りあげていただきました。
千葉市美術館の取り組みも詳しく書かれています。ぜひご一読ください。
関わってくださった全てのみなさま、誠にありがとうございました!
(報告者:高橋恵子 )









